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「時」3部作

 牧瀬里穂主演で映画になった「ターン」という小説、ご存知だろうか? 北村薫という、若い女性の心理描写が巧みなミステリー作家の長編で、真希という名の女性が交通事故に遭い、一夜明けると、同じ風景だが誰もいない「別世界」の「前日」の朝に戻ってしまって、そのまま同じ日が繰り返されるといった話だった。もちろん最後には感動の展開があるわけだが、それは読んでいただくしかない。「ターン」は、突然25年後の自分になってしまった17歳の女の子を書いた「スキップ」、時代の流れの中で、悲劇を経て生まれ変わる男女の話である「リセット」とともに、時をテーマにしたSF風3部作の一つである。作者独特の心の優しさと文章の易しさがページの隅々から伝わり、その筆力に感心する。
 北村作品には、若手落語家「円紫師匠」が探偵役となる「空飛ぶ馬」「夜の蝉」「秋の花」のシリーズや、家では深窓の令嬢、外に出るとじゃじゃ馬娘に変身するお嬢さん探偵が主役の「覆面作家」シリーズなどがある。本人自身、1989年にデビューした時は覆面作家で、作風から若い女性かと思われていたが、その後覆面を脱いだら、実は中年のオジサンで、高校の国語教師だった。「夜の蝉」で91年に推理作家協会賞を受賞している。
 ミステリー作品でも、あまり血なまぐさい場面はないし、殺人事件が最後まで起きない物語もあるのが特色。そんな推理小説、面白くないだろうと思う人もいるかと思うが、読んでみると、日常生活で気づかないちょっとした謎を鮮やかに解いて見せ、なるほどと思わせることがしばしばある。さらに、随所に、日本の伝統芸能や古典文学の知識がちりばめられていて、そうした知識が自然に身につくエンターテインメント小説である。
 4年前、大学受験のとき国語で苦労していた娘に、「北村作品を読むと勉強になるよ」と勧めたことがある。そのせいで合格したわけではないだろうが…。


        
北村薫の「時」3部作(左から)「ターン」「スキップ」「リセット」


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