明日 I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
 HOME / ごあいさつ / 自分史(1946〜2002) / 父との別れ / 憂楽帳 / 惰学記 / 父の思い出 / 後援会 / 大きなうた / 余談独談

市民が主役

惰学記


ざんげの値打ちもない

 北海道ニシン漁の「夢の跡」を歌った1975年の「石狩挽歌」(なかにし礼作詞、浜圭介作曲)で知られる北原ミレイのデビュー曲が「ざんげの値打ちもない」(阿久悠作詞、村井邦彦作曲)である*1。彼女は68年に愛知県豊橋市から上京、クラブで歌っているところを水原弘や阿久悠に見出され、70年秋にレコードデビューした。四角い顔で独特の超アルトの声を出す北原ミレイは、「石狩挽歌」では突き放すような歌い方をしているが、「ざんげの値打ちもない」は見事な感情表現で、不幸な青春時代を送った女心を歌いあげている。
 この年の4月に「15、16、17と 私の人生暗かった」という歌詞が有名な藤圭子「圭子の夢は夜ひらく」(石坂まさお作詞)が大ヒットしており、阿久悠の書いた「ざんげの値打ちもない」の詞は、その「暗かった人生」を、あえて掘り下げたような形になっている*2。
 著作権の関係で歌詞をまるまる引用することはできないので、ネットの検索サイトで「ざんげの値打ちもない」を探してもらうほかないが、おおよその内容は以下の通りである。
 14歳になったばかりの寂しい少女が、ある寒い夜、人恋しさに行きずりの男に抱かれ、翌年5月、15歳の誕生日に*3、花を一輪飾った指輪をもらって結婚を夢見るが、19歳で結局裏切られ、ナイフを持って男を待ち伏せる。そして4番で、何年か後のクリスマスの夜に彼女が「ざんげの値打ちもないけれど」と言いながら過去を告白する――という物語だ。
 ところが、08年6月5日、阿久悠没後1周年のNHK歌謡コンサートで、この4番の前に「幻の4番」があったことが明らかにされ、北原ミレイ自身が1〜5番の完全形をテレビ初披露した。迫真の歌唱に私は思わず泣いてしまった。「幻の4番」は「あれは何月、風の夜 とうに二十も過ぎた頃 鉄の格子の空を見て 月の姿がさみしくて……」と、主人公が刑務所生活を示唆する歌詞だったため、放送禁止歌になるのを恐れて省かれたようだ。

*1 この曲は作詞家・阿久悠が一人前として認められるきっかけとなった作品と言われ、「阿久悠作品の中でも一番」と評価する人もいる。
*2 牧村三枝子の72年のデビュー曲「少女は大人になりました」(千家和也作詞)もよく似たつくりである。
*3 2月に14になったばかりの少女が翌年5月に15の誕生日を迎えるのは話が合わないが、まあ、いいとしよう。


※曲名が「ざ」で始まる歌は少ない。「ざんげの値打ちもない」以外には、座頭市(勝新太郎)、ザ☆ピース(モーニング娘。)、残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)、残雪(舟木一夫)くらいしか浮かばない。



<back>
 HOME / ごあいさつ / 自分史(1946〜2002) / 父との別れ / 憂楽帳 / 惰学記 / 父の思い出 / 後援会 / 大きなうた / 余談独談

 大橋建一へのご意見等は、こちらから。  E-Mail : info@ken-ohashi.jp url