明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
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市民が主役



惰学記




East of Eden(エデンの東)

 今年は日本のテレビ放送が始まって60周年という節目の年である。しかしテレビが一般に普及するのは、それから6年後の「皇太子ご成婚*1」のころからである。それまでの間は、放送メディアの主役はまだラジオだった。特に外国音楽は音源がレコードだけで映像と連動させにくいので、クラシックも軽音楽もテレビに不向きとされ、ラジオが主役の時代が続き、AMラジオ2局を使ったステレオ放送*2など意欲的な取り組みが行われた。
 この時期は映画もまだ盛んで、ラジオで曲を聴きながら映像をイメージできる洋画の映画音楽もかなり人気があった。民放局ごとに洋盤のヒットチャート番組が必ずあり、その中でも文化放送の「ユア・ヒットパレード」は映画音楽が常に上位に立つのが特色だった。
 中でもジェームス・ディーン主演のワーナー映画「East of Eden(エデンの東)*3」のテーマ曲は1955年11月の日本での映画公開と共に「ユア・ヒットパレード」の1位となり、以後連続35週間首位を独占、36週目にこれまた映画音楽の「誇り高き男*4」にトップの座を譲るが、すぐにまた1位を奪い返した。結局通算79週1位、年間ランキングでも56年から3年連続で1位という今では信じられないような大記録を達成したのである。
 彗星のごとく登場し、「エデンの東」日本公開直前の55年9月30日に自動車事故で急死したジェームス・ディーン*5の劇的な生涯が映画と楽曲大ヒットの最大の要因で、私は56年8月ごろの新聞*6に「エデンの東の主題曲がついに1位を明け渡した」という記事が載り、ポピュラー音楽に全く興味のなかった母が、その記事を私に読み聞かせたことを覚えている。それほど、ジェームス・ディーンとエデンの東は当時ブームだったのである。もちろん、メロディーは素晴らしく、ビクター・ヤング・オーケストラの演奏も良かったが、不思議なことにこれは映画のサウンドトラック盤ではなく*7、いわばカバー盤であった。
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 都合で前週に続き惰学記となった。アルファベットシリーズ「E」の2回目である。
 
*1 今の天皇陛下と美智子皇后が1959年4月10日に挙式され、馬車による都内パレードが行われ、テレビ中継された。これを見るためにテレビを買う国民が全国津々浦々にいて、一気にわが国のテレビ普及が促進された。それまでは近所の裕福な家や電気店に見せてもらいに行くとか、街頭に設置されたテレビを遠巻きにして見るのが庶民の普通の姿だった。
*2 NHKの第1、第2放送、民放では文化放送とニッポン放送(いずれも東京)が組んでステレオ放送を行っていたことがある。当時は立体放送などと呼んでいたが、FM放送が普及し1つのバンドでステレオ放送が可能になると、AMでのステレオ放送は行われなくなった。
*3 映画「East of Eden」は米国の作家スタインベックが1952年に発表した小説を基にエリア・カザン監督が映画化した。聖書創世記のカインとアベルの物語を下敷きに兄弟の確執、親子の愛と葛藤などを描いた作品。
*4 「誇り高き男」は20世紀FOXが1956年に制作したロバート・ライアン主演の西部劇。スリーサンズの口笛と弦楽器だけで演奏されるテーマ曲が評判となった。
*5 ジェームス・ディーン(1931〜55)はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)演劇科で学び、映画の端役に何度か出演した後、「エデンの東」の主役に抜擢された。この作品で彼はアカデミー主演男優賞にノミネートされた。以後「理由なき反抗」(共演:ナタリー・ウッド)と「ジャイアンツ」(共演:エリザベス・テーラー、ロック・ハドスン)に出演した。自動車事故で彼が24歳の生涯を閉じた55年9月30日は「ジャイアンツ」撮影終了直前で、いくつかの出演シーンが残っていたが、シナリオを変更してしのいだという。
*6 当時の新聞は朝刊が16ページ程度で薄かったのに、こんな記事が一般紙に載ったのである。
*7 作曲したのはレナード・ローゼンマン(1924〜2008)で、ジェームス・ディーンのピアノの先生だったため、ディーンの紹介で主題歌を担当することになった。ローゼンマンはもっと現代音楽風のテーマ曲にしたかったようだが、監督が反対し、オーソドックスなワルツの名曲が生まれた。しかし、サウンドトラック盤はもっとテンポが速く、曲自体も短かった。今ではこれをカバーしたビクター・ヤング・オーケストラのレコードがさもオリジナル・サウンドトラック盤のようにYOU-TUBEなどでも流れている。ローゼンマンはこの曲を気に入っていなかったのかも知れない。



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