小学校4年生だった1956年ごろは映画全盛期で、外国映画の主題曲が洋盤のヒットチャート上位を占めていたことは「East of Eden(エデンの東)」の回に書いた。ジェームス・ディーンの遺作となった「ジャイアンツ*1」のテーマやミュージカル映画「王様と私」の主題歌「Shall We Dance*2」、西部劇「誇り高き男」の同名テーマ曲、ヒッチコック映画「知りすぎていた男」の主題歌ケ・セラ・セラ*3など、ヒット曲は数えたらきりがない。 |
そんな中で、珍しく映画音楽と無関係なポップスがヒットチャートを急上昇し、当時の私には新鮮に思えた。それがジョニー・レイの「Just walkin' in the rain(雨に歩けば)」であった。歌詞は典型的な失恋ソングだ。失恋の傷心を洗い流すために雨の中をずぶぬれになって歩いたが、彼女のことが忘れられない。そんな私を多くの人が窓からじろじろ見下ろして「なぜそんな愚かなことするの」と言うけど、私は構わず歩きながら、彼女との出会いを思い出している。分かっているけど、どうしても忘れられない――という内容だ。 |
ジョニー・レイ(1927〜90)は1950年代、現在のロックンロールの原型と言うべき独特のリズムを考案して演奏に取り入れ、プレスリーの先駆け的な存在として全米で人気があった。51年の「Cry」が大ヒットし、「泣き節のプリンス」などと呼ばれ、54年のマリリン・モンロー主演ミュージカル映画「ショウほど素敵な商売はない」にも出演している。 |
「Just walkin' in the rain」のオリジナルは52〜53年ごろジョニー・ブラッグという人がリリースしたがヒットせず、ジョニー・レイが約3年後にカバーして大ヒットさせた。口笛から始まり、メロディーと口笛が追いかけっこするアレンジが新鮮で、これに2コーラスからの得意の「泣き節シャウト」が重なり印象を強めたようだ。ロックンロール時代の到来を告げる曲で、以後プレスリーやポール・アンカ、ニール・セダカらが台頭する*4。 |
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