明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
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市民が主役



惰学記




Que sera sera(ケ・セラ・セラ)

 タイトルが「P」で始まる曲の二つ目は、「マザー・グースの詩」といわれる英国の伝承童謡のうちの1曲である「Que sera sera(ケ・セラ・セラ)*1」だ。様々なエピソードを交えて書くことにする。
 中学2年の時、私たちの学年担当の英語教諭が米国に留学したため、2学期から女性の臨時講師が授業を代行した。その先生が教えてくれたのが、子猫が女王に会いにロンドンに行ったというこの歌だ。歌詞は“Que sera sera(ケ・セラ・セラ),Que sera sera(ケ・セラ・セラ),Where have you been? ”“I've been to London to visit the Queen”“Que sera sera(ケ・セラ・セラ),Que sera sera(ケ・セラ・セラ),What did you do there? ”“I frightened a little mouse, under her chair*2”である。たぶん当時、現在完了について習っていたので、この歌の構文がお手本になると考えて、この曲を教えたのだと思う。
 「英語で本三昧」というホームページに、この歌についてのうんちく話が記載されている。それによると、この歌にまつわる話は16世紀の英女王エリザベス1世にさかのぼる。そのⅠは、ある日王宮の女官の飼い猫が王座の下にもぐりこみ、尻尾で女王の足を触るという「大事件」が起きた。哀れ子猫はお手討ちかと誰もが震え上がったが、女王は「ネズミさえ取ってくれればいいのよ」と赦してくれてこの歌ができたという「誕生秘話」。
 そのⅡは、200年余り後、ビクトリア女王に謁見した貴族が女王に「女王陛下にメッセージはないかと娘に聞いたら、『陛下の椅子の下に住んでいるネズミをください』と娘が言っていた」と話し、女王はとても喜んだという話。そのⅢは、戦後若くして戴冠したエリザベス2世が空軍兵の家族を訪ねた時、小さい男の子が「あれっ?Pussyはどこ?」と聞いたので女王が「ごめんなさい。今日は連れてこなかったのよ」と謝ったというエピソードである。有名な英国の3人の女王*3が登場するのが話のミソで、この子猫の話が500年近くも語り伝えられてきたことがわかる。それほど英国では親しまれている童謡らしい。
 
 終戦前のSentimental Journey(1944年)をはじめ、Tea for Two(50年)、Secret Love(53年)*1など今ではスタンダードナンバーとなった数々のヒット曲で知られるドリス・デイが、1956年公開のアルフレッド・ヒッチコック監督作品「知りすぎていた男」に出演(夫役はジェームス・スチュワート)し、自ら歌った主題歌がQue sera sera(ケ・セラ・セラ)である。この曲は米国で大当たりして、56年度のアカデミー歌曲賞を獲得、日本でもオリジナル盤はもちろん、ペギー葉山ら多くの歌手がカバーするヒット曲となった。
 実は私は小学生時代に、母に連れられて行った和歌山市内の映画館でこの予告編を見たのだが、雑踏の中を、ナイフで背中を刺された男が主人公夫妻に近づいてきて倒れる場面が妙に印象に残っている*2。昔から私はとても怖がりで、今でも残酷な場面のある映画は見る気がしないが、ヒッチコック作品はスリルとサスペンスに富んでいても、後期の「サイコ」「鳥」などを除きあまり残酷なイメージはないので嫌いではなかった。わが家にテレビが入った1957年ごろ毎週放映されていた「ヒッチコック劇場*3」などは好んで見ていた。
 さて、ケ・セラ・セラはスペイン語的な俗語フレーズ*4で、英語で言えば、続く歌詞のWhatever Will Be, Will Be、すなわち日本語訳歌詞*5の通り「なるようになる」という意味である。映画の原題「The Man Who Knew Too Much」と「先のことなど分からない」という主題歌がいわば真逆であるところがヒッチコック独特のユーモアセンスのようだ。
 忘れられないのは、小学校5年生の時の担任教師が「ケ・セラ・セラという歌がはやっているが、あれは悪い歌です。『なるようになる。先のことなど分からない』というのでは、努力しても無駄だと言っているようなものです。あんな歌はいけません」と真顔で説教したことだ。「この先生はユーモアの分からない人だなあ」とがっかりした覚えがある。
×         ×         ×
 年内最後の惰学記がQue sera sera(なるようになる)ではあまりに無責任ではないかという真面目なご批判をいただくかもしれないが、たまたまQの回だったということでお許し願いたい。コラムを愛読していただいている皆様。よいお年をお迎えください!
 
*1 ドリス・デイは1924年4月生まれで、44年公開の映画Sentimental Journey(センチメンタル・ジャーニー=もちろん松本伊代の曲とは別物である)の主題歌を歌ってブレークした。この映画には出演していないが、その後女優としても人気を得て、Tea for Two(二人でお茶を)や「カラミティー・ジェーン(主題歌Secret Love)」に出演、主題歌を歌った。「知りすぎていた男」以後も、「先生のお気に入り(58年)」でクラーク・ゲーブルと、「夜を楽しく(59年)」ではロック・ハドソンと共演し、それぞれの主題歌「Teacher’s Pet」「Pillow talk」をヒットさせている。
*2 この映画はアメリカ人の医者(ジェームス・スチュアート)がブロードウェイのスターだった妻(ドリス・デイ)と7歳の息子の3人でモロッコに旅行し、息子が誘拐され、要人暗殺計画に巻き込まれるというスパイもので「巻き込まれもの」というヒッチコック得意のジャンルの映画だった。
*3 ニッカウィスキーの提供で、ヒッチコックの声を熊倉一雄が担当、毎回ヒッチコックが登場してドラマの内容について語るのがスタイルだった。この形はタモリの「世にも奇妙な物語」やアニメの「笑ゥせぇるすまん」に受け継がれているように思える。
*4 ちなみに「なるようになる」をスペイン語の文法に従って表記すると "Lo que será, será"、ポルトガル語では "O que será, será"、イタリア語では"Quello che sarà, sarà"、フランス語では "Ce qui sera, sera"となるそうだ。
*5 音羽たかしについては何度か書いたが、キングレコード所属の作詞家で、ザ・ピーナッツなどがカバーしたポップス曲の訳詞家として知られる。本名・牧野剛。後にキングレコードの役員も務めた。昭和30年代のキングレコード本社が文京区音羽にあったことにちなんでニックネームが誕生したという。なお、ケ・セラ・セラの英語歌詞と音羽たかし訳の日本語歌詞の1番を以下に掲げる。見事な訳詞だと思う。
When I was just a little girl I asked my mother what will I be 
Will I be pretty  Will I be rich Here's what she said to me Que sera sera
Whatever will be will be  The future's not ours to see  Que sera sera

私の小さい時  ママに聞きました  美しい娘になれるでしょうか
ケセラセラ   なるようになるわ  先のことなど分からない

★曲名がQで始まる歌はさすがに少ない。余り有名でないJ-POPSや洋楽を含めても以下が挙げられる程度だ。Quarter Back(石川秀美)、QUEEN OF THE ROCK(布袋寅泰&土屋アンナ)、QUIEN SERA、QUIZAS QUIZAS QUIZAS(トリオ・ロス・パンチョス)、Q&A(B’z)、Qちゃん音頭(アニメソング)


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