明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
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市民が主役



惰学記




Swing Low, Sweet Chariot

 「S」も3曲目を書く。中学生のころ、教会に通っていたことは惰学記数シリーズ「讃美歌130番」で書いた。県内プロテスタント教会が合同で日曜学校メンバーを対象に、夏休みに「みなべ*1合宿」を開催しており、私も1~2度参加した。昼間は海水浴や、船で近くの鹿島を探検したりのキャンプ気分で、夕方から食事をはさんで牧師さんの聖書講話を聞き、讃美歌やキリスト教に関係の深い歌をみんなで歌ったり、練習したりした。その時に教わった曲で印象深かったのが黒人霊歌*2の「Swing Low, Sweet Chariot」だった。
 生まれ故郷のアフリカ各地で、17~19世紀に捕えられたり売られたりして奴隷船でアメリカ大陸に渡った黒人奴隷は一説には1200万人と言われる。うち約65万人が現在の合衆国内に送られた。南北戦争前の合衆国国勢調査では奴隷人口は400万人に達していた。
 言葉も満足に教えられず、希望のない日々を送っていた黒人奴隷たちに、18世紀末ごろから宣教師たちが聖書の詩編や讃美歌を教えることを通じてキリスト教を広めたのがきっかけで、彼らが元々持っていた歌の才能やリズム感が開花し、アフリカの音楽と西洋音楽をミックスしたような独特の音楽を生み出した。これが黒人霊歌で、聖書の物語を歌ったような内容の裏に、奴隷解放の願いを込めた二重の意味を持つ歌詞が多い。「Swing Low, Sweet Chariot」は、1872年ごろ誕生した代表的な黒人霊歌の一つで、旧約聖書の預言者の1人であるエリヤ*3が火の戦車に乗って天国へ昇るという話を基に、自分たちを迎えに馬車が天国から降りてきて、ふるさとに送り届けてほしいという願いを歌ったものである。
 ところで、ドボルザークが1893年に発表した交響曲「新世界より」の第1楽章に「Swing Low, Sweet Chariot」のメロディーそっくりの箇所があるというのは有名な話*4のようで、そのことが話題になり、原曲の「Swing Low~」は再び脚光を浴びるようになったそうだ。
 
*1 当時の日高郡南部町。2004年10月、上流の南部川村と合併、みなべ町となった。梅の産地で、高級梅干「南高梅(ナンコウウメ=多くの人が「ナンコウバイ」と呼んでいるがナンコウウメと読むのが正しい)」は、梅干の品種として最も優良な母樹を県立南部高校の教諭が認定したことから南部高校の略称を取って南高梅と名づけられた。また、ウバメガシを使った高級木炭の紀州備長炭の産地としても有名だ。海に近い旧南部町は漁業も盛んである。約1km沖合いに鹿島という無人島があり、茨城県鹿嶋市の鹿島神宮から勧請したという鹿島神社がある。
*2 黒人霊歌は英語のNegro Spiritualsを和訳した言葉で、Spiritualは元々「魂の」とか「神の」「宗教の」という意味の形容詞だが、転じて名詞として「聖歌」「霊歌」の意味で使われる。米国では、差別的なniggerという俗語はもちろん、黒人を意味するnegroという言葉も最近は使わなくなっており、わが国でも黒人という言葉を避けて「アフリカ系アメリカ人(African‐Americans)」と言うことが多くなった。こうしたことから米国では単にSpiritualsと言えば今は黒人霊歌のことだが、日本語には適当な言い換えがない。
*3 旧約聖書「列王記」下・第2章
*4 ドボルザークの「新世界より」は1892年から3年間、彼が米国に滞在していた間の作品で、新世界である米国から、故郷のボヘミアに送ったメッセージとされる。第2楽章の主題である「ミソソ ミレド レミソミレ」というメロディーが「家路」として広く知られている。当時彼は黒人霊歌もたくさん聞いており、そのメロディーにボヘミア民謡との共通点があることに郷愁を覚えていたようで、第1楽章の主題の一つが「Swing Low, Sweet Chariot」のメロディーに似ているのも、影響を受けたというレベルの話に思える。実は私はこのコラムを書くために調べていて、「Swing Low~」をドボルザークがパクったという説を初めて知り、何度も2つのメロディーを聞き比べてみたが、似ているといえば似ている程度に思えた。You Tubeにはさまざまなアレンジのバージョンが収録されているが、私が聞いた限りでは最もオリジナルに近いのが http://www.youtube.com/watch?v=v8frEt6w4G8 なので、知らない方は一度試聴してみてください。



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