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花はさくら木

 和歌山県出身の作家で、私の和歌山大学附属中学の1年先輩になる辻原登さんの時代小説「花はさくら木」(朝日新聞社刊)が大佛次郎賞に選ばれ、2月4日(日)に和歌山市内で祝賀パーティーが開かれた。パーティーは辻原さんと中学・高校が同級だった南條輝志男・和歌山県立医大学長と、辻原さんと今も家族ぐるみの付き合いが続く市内在住の随筆家・梅田恵以子さんが発起人となり、辻原さんと同郷の二階俊博・自民党国会対策委員長や「附属中学つながり」の仁坂吉伸県知事も出席し、私もお祝いのあいさつを依頼された。
 辻原さんは1990年に「村の名前」で芥川賞受賞後、99年「翔べ麒麟」で読売文学賞、2000年「遊動亭円木」で谷崎潤一郎賞、05年「枯葉の中の青い炎」で川端康成文学賞と主要な文学賞を総なめにした純文学の雄である。毎日新聞の書評委員も長く務めておられるので、面識はあり、共通の知人も多いのだが、実は私は純文学が苦手で、これまで辻原作品を避けて通っていた。だから「あいさつを」と言われて困ってしまった。
 仕方なく、と言うと語弊があるが、とにかく慌てて受賞作を読み始めたら、これが実に面白いのである。時は江戸中期、十代将軍家治の時代で、田沼意次(通常は悪役だが、この小説では時代を先取りした政治家として爽やかに描かれる)と家来の青井三保という強い侍、そして後に女帝・後桜町天皇となる智子内親王、数奇な運命を背負った菊姫という内親王と親しい美女の4人が主人公で、京・大坂を舞台に、紀州藩や対馬藩、朝鮮通信使、与謝蕪村、豪商の鴻池宗益と北風荘次郎らが絡んで、波乱万丈の物語が繰り広げられる。
 時代は米を基軸とする農村経済から、商い中心の町人経済への転換期で、その時を狙って、経済の中心を大坂から江戸に移したい幕府と、それを阻もうとする大坂商人の暗闘があったという設定で、その時代が輩出した歴史上の人物像を虚実織り交ぜて紹介しつつ、わが国独自の文化が大きく花開いた江戸時代を生き生きと明るく描写している。
 読み始めた時は、隆慶一郎(1923〜1989)が将軍徳川秀忠と後水尾天皇の対立を描いた未完の名作「花と炎の帝」の「続編」という印象だったが、これは「花はさくら木」の智子(後桜町天皇)と母青綺門院、「花と炎の帝」の興子(明正天皇)と母東福門院(後水尾天皇の妃で秀忠の娘)という親子関係がそれぞれの重要なポイントだからだろう。
 かなり急いで読み進んだが、何しろ本を入手したのは2日前で、結局「半分しか読んでいませんが」と言い訳しながらのあいさつとなってしまった。先にあいさつした仁坂知事が「まだ少ししか読んでない」と正直に話してくれていたので、私も白状しやすかった。
 純文学というから読みにくいという先入観があったが、辻原登さんは意外にも?読みやすい文章を書く人だった。ジャンルも作品ごとに広がるし、賞総なめも当然である。


大佛次郎賞を受賞した辻原登さんの「花はさくら木」(朝日新聞社)




和歌山市で開かれた大佛次郎賞受賞祝賀会で記念講演する辻原登さん



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