I will support Ohashi For tomorrow.
 HOME / ごあいさつ / 自分史(1946〜2002) / 父との別れ / 憂楽帳 / 惰学記 / 父の思い出 / 後援会 / 大きなうた / 余談独談



記者の「盗作」

 古巣の毎日新聞でも記者の不祥事が起きているので気が引けるが、記者による記事盗作事件が続いていることについて書く。続発のポイントは3つだ。第1に、新聞記者は他人の記事を「参考に」原稿を書くことがごく普通にあり、盗作という意識が元々薄いこと、次にパソコンやインターネットの普及で他社の記事が簡単にコピー可能になったという時代の変化だ。社説盗用の続発はこの2点が原因で、社説も各社同じ論調になりがちな日本の新聞社の横並び体質が背景にある。そして第3は、朝日新聞でさえ、カメラマンや記者職以外からの配転組が記事を書くようになっているという新聞社の人事政策の問題だ。
 第1は、新人記者の修業システムの問題である。研修が終わると、新人は少人数の地方支局に配属されるので、先輩記者に連れられてのあいさつ回りが済むとすぐ、著名人の死亡記事や交通事故など発表に基づく簡単な原稿を書いたり、記者クラブに持ち込まれる発表文のプリント(「投げ込み」と呼ばれる)をリライトするような仕事をさせられる。
 これらは「いつ、誰が、どこで、何を、何故に、いかにして」の5W1Hを簡潔に書くという基本的な形があるので、困った時は切り抜き帳を見て似たパターンの記事を探し、それを頼りに文章をまとめるのである。私自身、カメラマンが撮った季節の花とか行事の写真に短い記事をつけろと指示され、どう書けばいいか分からずスクラップ帳を見ていたら、「見ないと書けんのか。そういうのをスクラップ記者と言うんだ」と先輩にからかわれたことがある。記者なら誰でも新人時代に各社の記事を「参考に」原稿を書いた覚えがあるはずだ。それでも原稿を手で書いていた時代は、丸写しには抵抗感があり、少しずつ工夫するので、定型文以外は同じ文章がまかり通ることはなかった。だがパソコン時代になると、ネット上で検索した記事の必要部分を範囲指定してコピーすれば簡単に自分の原稿に取り込めるので、ますます盗作意識が薄れてきた――これが第2のポイントである。 最後のポイント、これは深刻な話である。新聞社も技術革新が進み、かつては重要職種だったオペレーターや速記者は配置転換を余儀なくされる。カメラマンも、写真だけ撮って記事はライターにというような人員配置の余裕がなくなり、記事を自分で書かなければならない時代である。だが、カメラマンやオペレーターには作文が不得手で記事を書くのがつらい人も多いのである。ところが記者上がりの新聞社幹部は、書くのが苦手だという異職種出身者の気持ちが分からず、「難しい記事を書けといっているわけじゃないんだから、スクラップでも見ながら気楽に書いてくれればいい」と気軽に言う。カメラ技術では偉そうにしているベテランだけに、「そんな記事も書けないのか」と言われたくない精神的重圧で、必死にネット上で他社の記事を見つけ、コピーしていたと想像すると、少し心が痛む。

<back>
 HOME / ごあいさつ / 自分史(1946〜2002) / 父との別れ / 憂楽帳 / 惰学記 / 父の思い出 / 後援会 / 大きなうた / 余談独談

 大橋建一へのご意見等は、こちらから。  E-Mail : info@ken-ohashi.jp