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聴取
民主党・小沢一郎幹事長の金銭疑惑問題について論評する立場にはないが、東京地検特捜部の捜査段階で新聞の見出しに飛び交った「聴取」という言葉が気になった。どの新聞も「小沢幹事長を聴取」、あるいは「を」を略して「小沢氏聴取」となっていたからだ。
私がかつて新聞社で整理記者*1をしていた時、「聴取」は「<○○>から<事情>を聴き取る」ことだから「『から聴取』でないと日本語としておかしい」と先輩に厳しく仕込まれたものだが、今回「から聴取」とした新聞は、私が見た限りではひとつもなかった。
見出しは、外国映画の字幕と同じで、使う言葉の字数が少なければ少ないほどインパクトがある。人間の目が1度にキャッチできるのは10字程度までで、それ以上は難しいからだ。だから、整理記者は常に1字でも短くする工夫と努力をしている(はずだ)。「から聴取」が「を聴取」や「聴取」になったのは字数を減らすためだと前は思っていた。
しかし、最近の見出しで「聴取」が使われる場合、事件の容疑者、いわゆる重要参考人に警察や検察が任意出頭を求めるか、任意同行して取り調べるケースに限られるように思える。容疑者以外の関係者の事情聴取や参考人聴取の場合は、わざわざ「参考人聴取」「事情聴取」とすることからもそう推測できる。つまり、今では、いわゆる「任意取り調べ」のことを『聴取』と表記するのが暗黙のルールとなっているように見えるのである。
その「任意」だが、テレビのサスペンスドラマを見てもわかるように、任意同行というのは、ほとんどの場合「有無を言わさぬ連行」に近い。「任意出頭」も、求められれば最終的には拒否できない*2のである。「任意」とは逮捕状を施行していない状況に過ぎない。
つまり、「任意取り調べ」とは、通常、逮捕の一歩手前とか、調べに素直に応じないなら逮捕するぞ、という緊迫した状態での取り調べのことであり、そういう状況が見出しで『聴取』とされるのである。『取り調べ』を『聴取』と言い換えているだけなので、「から聴取」ではむしろピント外れとなり、緊迫感にも欠ける。だから、「を聴取」が使われるようになり、「を聴取」に抵抗感のある古手編集者は、「を」を略して単に『聴取』とするのだと理解すべきだろう。ただ、それなら『聴取』より『調取』の方が的確に思えるが……。
捜査報道に使う新聞用語は時代とともに変わっていく。昔よく使われた「検挙*3」は今新聞やテレビではお目にかからない。かつて何の疑問もなく呼び捨てにしていた逮捕後の被疑者名も、今では「○○容疑者」で、逮捕時の見出しは、たとえ現行犯でも「○○容疑で」などの言葉がつくようになった。人権意識の高まりが背景にあるのは結構だが、捜査報道の手段は旧態依然で、根本的に見直されている気配が感じられない。言葉を慎重に選んで言い換えておけばそれでいいという安易な姿勢が感じられるのが気がかりである。


*1 各部から出された原稿の価値を判断し、見出しの大きさなど扱いを決め、見出しをつけて、紙面を作り上げるのが整理記者の仕事である。私は1975年から97年まで22年間、大阪、東京、名古屋で整理記者をしてきた。
*2 今回、小沢幹事長も任意出頭要請を最終的には拒否できなかった。
*3 検挙は捜査用語で、粗暴犯の容疑者を任意同行して取り調べることや、賭博場などに踏み込んで、そこにいた全員を連行することを言う。昔は新聞やテレビも警察発表のまま「暴力団員○人を検挙した」「過激派×人を検挙」などと使っていた。人質事件などで犯人が取り押さえられた時でも、昔は逮捕確認までは検挙と表現していたが、最近は「身柄を確保した」という意味の「確保」に変わってきている。


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