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ザ・コーヴ(上)
 和歌山県太地町のイルカ漁のようすを隠し撮りしたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」が第82回アカデミー賞*1のドキュメンタリー賞を受賞した。イルカやクジラを食べることを「悪」として告発する立場で制作された映画であり、当然、クジラ・イルカ漁を地域と切っても切り離せない伝統文化と考えている和歌山県太地町の住民が猛反発している。
 私は太地町に隣接する那智勝浦町の下里というところで生まれたので、幼いころからクジラと縁のある食生活をしてきた。ベーコンは懐かしく、東京で一人暮らしだった学生時代に店頭で見かけると、よく買って食べた覚えがある。学校給食によく出ていたクジラの竜田揚げは、硬くてなかなか噛み切れなかったが、良く噛んで食べる習慣をつけるには良い食材で、「クサい」と嫌う子もいたが、私は嫌ではなかった。そして太地周辺でしか手に入らなかったのがイルカの「ゆで物」、すなわち何種類もの内臓をゆでたものだ。スライスして、ショウガ醤油で様々な食感を味わいながら食べるのが美味で、今も忘れられない。
 さて、「ザ・コーヴ」は、新聞などによると、1964年の人気TVドラマ「わんぱくフリッパー*2」でイルカの調教を担当した人物を語り部に、ドラマをきっかけにイルカショーが広がり、イルカを不幸にしたとの「反省」から、イルカ漁のメッカ太地町に「身の危険を顧みず」潜入、隠しカメラで漁の実態をキャッチ、その肉が「クジラ肉」として売られ、「水銀で汚染されたイルカ肉が学校給食に使われている」とか、太地でそのような「残虐行為」が行われているのを日本人のほとんどは知らない――と訴える筋書きのようだ。
 つまり、ドキュメンタリーの手法を使った「プロパガンダ」映画で、ことさらに「残虐さ」を強調し、「知能の高いイルカを食べるのは野蛮だ」という米国人お決まりの主張で、「野蛮な風習を捨てられない哀れな民族」を「善導する」という狙いの作品である。一つの主張を広めるためにドキュメンタリー的手法を駆使してプロパガンダ映画を作ることは自由だが、その映画が、一方的な見方に支えられて賞を取ることには胡散臭さを感じる。
 「シーシェパード」の調査捕鯨妨害行為が大々的に伝えられ、世界的に反捕鯨意識が高まっているように見えるが、その中心は米国であり、生物学的には小型のクジラであるイルカ漁への非難も、同じ動きの一環である。私には、仕組まれたジャパン・バッシングに見える。反捕鯨キャンペーンがセンセーショナルになったのはベトナム戦争が泥沼化した1970年代初頭で、その後も米国の経済が悪化するたびにジャパン・バッシングが起き、それに合わせて反捕鯨運動が展開されたのではないか。「トヨタたたき」のエスカレートと並行して「シーシェパード」が活発化し、「ザ・コーヴ」がアカデミー賞を取るのは、裏に反日感情をあおる意識的な動きがあることを思わせる*3。次回も引き続きこの点を論じたい。


*1 第82回アカデミー賞はキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」が、作品賞・監督賞など9部門を獲得し、元夫の話題作「アバター」を圧倒した。「ハート・ロッカー」はベトナム戦争を扱った「ディア・ハンター」「帰郷」などと同様、戦争という非人間的な状況に置かれた人間が壊れていく話のようで、こういう映画は見るのがつらい。昨年は作品賞の「スラムドッグ&ミリオネア」も外国語映画賞の「おくりびと」も見に行ったが、今年はどうやらパスとなりそうだ。
*2 「わんぱくフリッパー」は、マイアミを舞台に、少年兄弟と彼らが飼っている「フリッパー」というイルカの友情と冒険のドラマで、日本では66年から通算2年、フジテレビ系で放映された。番組スポンサーが日本水産だったというのは今から思えば「えっ」という話である。「フリッパー」の訓練士(もちろんドラマには登場しない)リック・オバリーが後にイルカ保護運動家となり、「ザ・コーヴ」の語り部となったのである。
*3 昨年の「おくりびと」の外国映画賞受賞まで、毎年のように日本の作品や個人がアカデミー賞のさまざまな部門にノミネートされてきたが、今年はノミネートが全くなかったことも、米国における対日感情の変化を感じさせる。


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