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ホールガーメント
 昨年11月の余談独談「発明家の縁(えにし)」で、発明協会和歌山県支部50周年記念大会に臨席された常陸宮ご夫妻、豊田章一郎発明協会会長ご夫妻が鞄精機製作所を見学され、ホールガーメントと名付けられたコンピューター制御の立体横編み機が無縫製のセーターやワンピースを短時間で編み上げる様子を興味深くご覧になったことを書いた。
 島精機製作所は和歌山市が生んだ偉大な実業家であり、創意あふれる発明家でもある島正博さん(73)が一代で築いた東証1部上場企業で、今も本社を和歌山市に置き、コンピューター制御横編み機では世界シェアの60%以上を占めるトップ企業である。創業当時の島精機製作所は手袋編み機のメーカーで、島社長は作業中に機械に巻き込まれたりすることのない軍手を作ろうと考え、ゴム糸の入った手袋を発明し、これを縫製せず丸ごと立体的に編み上げる自動手袋編み機を開発した。これがホールガーメントの原型となった。
 手袋はサイズこそ小さいが、親指、人差し指、中指、薬指、小指とそれぞれ長さも異なり、親指と他の指では向きも異なるので、編み方は極めて複雑になる。島社長はある時、手首の部分をセーターやワンピースの首の部分に見立てると、親指は一方の袖、小指はもう一方の袖、あとの3指分が胴体に当てはめられることに気付き、無縫製の手袋が編めるなら、セーターやワンピースも同じ原理の応用で無縫製で出来るとひらめいたのである。
 こうして完成した無縫製ニットは、ニット特有の伸縮性が損なわれず、身体にフィットし、縫い目がないので袖付けなどがゴワゴワすることもない。裁断による生地の無駄や、手作業の縫製による仕上がりの不ぞろいを防ぎ、経費と時間も節約できるため、ニットメーカーの評価も高く、欧米では「産業革命に匹敵する発明」と称賛されているという*1。
 その称賛の証明が、宇宙飛行士・山崎直子さんが着用した船内服で、このうち長袖シャツと、芦田多恵さんがデザイン協力したことでテレビでも取り上げられたカーディガンに、島精機製作所のホールガーメント編み機を使った無縫製製品*2が採用されたのである。
 ところが、多分4月8日だったと思うが、某チャンネルの朝の情報番組を見ていたら、山崎飛行士の宇宙服が話題に取り上げられていて、取材したレポーターが「芦田多恵さんデザインのカーディガンはホールガーメントという無縫製の技術で製作されています」と説明した。ここまではよかったのだが、何と、番組メーンのキャスターが「無縫製というのは接着剤か何かでくっつけるということですか?」と、とんでもない質問をしたのである。そして、これについてのレポーターの答えが「ええ、そうだと思います」だったので、私は思わずひっくり返ってしまった。ホールガーメントも知らずに、物知り顔で偉そうにおしゃべりするテレビ人たちの取材の甘さと知識レベルの低さにあきれ返ったのである。


*1 この記載はYAHOO辞書を参考にした。ホールガーメントの「Whole」は全体、「Garment」は衣類1点といった意味なので、「Whole Garment」は「衣類丸ごと」というニュアンスの造語である。なお、島精機製作所のホールガーメントは「無縫製コンピュータ横編機およびデザインシステムを活用したニット製品の高度生産方式の開発」という業績で、2006年度の大河内記念賞生産特賞に輝いている。
*2 長袖シャツは富山県高岡市のエファイニットというメーカーが生産したもので、カーディガンは東京都中央区のJ-Spaceが製作した。


昨年11月、発明協会和歌山県支部50周年記念大会に臨席された常陸宮ご夫妻に随行して島精機製作所を見学、ホールガーメントの編み機の前で島正博社長の説明を聞いた


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