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ドーナツ盤
 今ではすっかり姿を消してしまったもので、とても懐かしいのがレコード盤である。私が小学生のころは、樹脂製で直径25〜30cm、落としたら割れてしまうSP盤という黒いレコード盤で、これを落とさないように気をつけながらプレーヤーにかけ、2〜3回も聞いたらだめになってしまう針のついたアームを慎重に盤の上に乗せて曲を聞いたものだ。アームに小さな丸いスピーカーが付いているポータブル型のプレーヤーには着脱式のハンドルがあり、曲を聞く前にハンドルでゼンマイを巻き上げる必要があったのも懐かしい。
 そのころの我が家にはSP盤がかなりあり、小学校時代の私はそれを聴いて育ったが、SP盤時代は当時がほぼ終末期で、中学生になった1959年あたりから、ポリ塩化ビニール製で割れにくいLP盤*1とドーナツ盤が普及し、瞬く間にレコード盤の主流となった。
 レコード盤は、音を収録した1本の溝を渦巻状に彫り込んだ盤を回転させ、針が溝をなぞって音を出す仕組みで、溝の長さと回転速度によって収録可能時間が決まる。SP盤は音質を確保するために毎分78回転が必要で、25cm盤は収録時間が片面3分、30cm盤でも5分しかなく、歌謡曲やポップスは収まっても、クラシックの大作などは十数枚のセットとなった。これに対しLP盤は33回転で、溝幅もSPより細くなって、30cm盤なら30分収録できたため、何曲も収める「アルバム」やクラシックの名曲収録に便利だった。
 一方、ドーナツ盤は、直径17cmというコンパクトなサイズ(といっても今のCDより5cmも大きい)が売りで、レコード盤を太いパイプに何枚もセットして自動的に盤を切り替え、連続して曲が聴けるオートチェンジャーを装備した新型の電蓄*2やジュークボックス用に真ん中の穴をドーナツの穴を連想させるほど大きくして開発された*3ものである。
 穴の直径は38mmもあり、LP兼用のプレーヤーではアダプターが必要だった*4が、音質の低下する中心付近に溝を切っていない*5ことと、回転数が毎分45回転でLP盤よりも速いため音は良かったが、片面の収録時間は5分以内で、30cmSP盤とほとんど変わらず、歌謡曲やポップスを両面に1曲ずつ収めるのに使用され、シングル盤とも呼ばれた。
 当時は洋盤が1枚330円、邦盤は300円とお小遣いを倹約すれば子どもにも買える値段で、私もニール・セダカやジョニー・ソマーズなど60年代のアメリカンポップスや、山口百恵ら70年代アイドルのドーナツ盤を買って、CD時代になっても大切に持っていた。
 9年前、急な話で新聞社を辞めて和歌山に帰ってくることになった時、大慌てで必要なものだけ持って引っ越したので、今も東京には本や衣類、布団、食器など様々なものが置きっ放しになっている。私の記憶では持っていたドーナツ盤などもどこかにあるはずだが、出張で家に泊まった時に、何度か探しても見つからず、行方がとても気になっている。



*1 LPはLong Playの略で、この言葉ができてからそれ以前の78回転盤をSP(Standard Play)と呼ぶようになった。ウィキペディアによればSPは日本でつけられた呼び名らしい。なお、LPは米国コロンビア社が1948年に開発した新システムである。
*2 電蓄は電気蓄音機の略。古い言い方だが、家庭用のステレオ装置が登場するまではこのように呼ばれていた。オートチェンジャー付きプレーヤーや一時期音楽喫茶など営業用にかなり使われていた。ジュークボックスはコインを入れて機械に入っている曲を選ぶと自動的に音楽がかかる装置で、米国では19世紀末からあり、日本には戦後駐留軍が持ち込んだようだ。
*3 ドーナツ盤はRCAビクターが1949年に開発した。EP盤ともいわれるが、厳密にいえばEPはExtend Playの略で、穴が小さく、回転数も33回転にして収録時間を延長(Extend)できるようにした17cm盤を意味する略語で、45回転のドーナツ盤はシングル盤、45回転盤とは呼べても、EP盤とはいえない。
*4 後にビクター系ではアダプターのいらないLPと同じ大きさの穴で、切り取り可能な「センター付き」といわれる45回転盤を出した。
*5 45回転または33回転という一定速度で回転するレコード盤の渦巻状の溝を、針が外側から内へと進むわけだから、内側に行けば行くほど回転半径が小さくなり、一周の長さが短くなるので内周になればなるほど音にひずみが出る。ドーナツ盤は穴が大きいので、溝の終点が他の盤より外側になり、ひずみが少ない。


(左)普通の45回転ドーナツ盤レコード (中)ドーナツ盤をプレーヤーに乗せる時に必要だったアダプター (右)ビクター系のドーナツ盤はセンター部分がアダプターを使わなくて済むよう細工されており、オートチェンジャーなどに使用する時は切り取れるようになっていた


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