明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
 HOME / ごあいさつ / 自分史(1946〜2002) / 父との別れ / 憂楽帳 / 惰学記 / 父の思い出 / 後援会 / 大きなうた / 余談独談 / 志談 市談 私談

市民が主役



余談独談




城下町和歌山夜ばなし

 昨年11月10日に刊行された「城下町和歌山夜ばなし」(宇治書店刊、B6判469n=2000円+税)は今年1月17日、80歳で亡くなられた和歌山市史研究の第一人者・三尾功氏の遺著となった。鉄砲伝来時代から徳川御三家の時代を経て、明治維新、戦後の和歌山城天守閣再建まで、和歌山市と和歌山城にまつわるエピソードが詰まった興味深い本である。
 三尾さんは1931年大阪生まれだが、那賀郡貴志村(現紀の川市貴志川町)で育ち、和歌山大学学芸学部(現教育学部)卒業後、和歌山市立中学校や県立高校教諭を経て、市教委指導主事として市史編纂を担当、85年からは市立博物館学芸課長を務め、高松小学校長を最後に91年定年退職した。その後、市立博物館長、同名誉館長、和歌山地方史研究会会長、県文化財研究会副会長、史跡和歌山城保存整備委員会委員長などの役職に就き、県文化功労賞(2007年)、市文化賞(09年)、文部科学省地域文化功労者表彰(11年)を受けた。
 「城下町和歌山夜ばなし」の基になったのは、三尾さんが市史編纂に取り組んでいた時に「市報わかやま」に連載した「市史編纂だより」を1985年の和歌山城築城400年に当たってまとめ、市が刊行した「城下町和歌山百話」*1だ。三尾さんには他にも専門書の「近世都市和歌山の研究」(98年)や自費出版の「城下町の片隅で」(01年)、「続 城下町の片隅で」(08年)があり、まさに「城下町和歌山」ひと筋の研究生活を送った人である。
 三尾さんは「百話」の増補改訂版を01年に出したが、これは最初の百話を手直しして、余話として5項目加えた小改訂だった*2。今回の「夜ばなし」は、増補改訂版を大幅に書き改め、最近の発掘調査や研究の成果をふんだんに取り入れた53話を新たに書き足した大改訂で、話の数が158になったため、タイトルも「城下町和歌山夜ばなし」に改められた。
 三尾さんのモットーは「内容は豊かに、言葉はやさしく」で、すべての著書がこの精神に貫かれており、一気に読めるのに中身が濃い。前作には触れられなかった江戸後期の藩政の実質的な中心地・湊御殿や西浜御殿の話、芭蕉の紀州遊覧や茶道、能楽など文化にまつわるエピソード、幕末・明治期では、最近再び注目されている川合小梅(藩校に勤めていた儒者・川合梅所の妻)の日記や、勝海舟を追って和歌山を訪れた坂本竜馬の話、夏目漱石が和歌山で講演した時のことなどが書き加えられ、シカゴとパリの万博で表彰された金工の板尾新次郎、西田幾太郎の師・雪門禅師ら知る人ぞ知る先人も紹介されている。
 さらに、2010年〜11年の和歌山城二の丸発掘調査の成果をはじめ、06年に復元された和歌山城の新名所、「御橋廊下」の図面発見から復元に至る経過、07年の発掘調査で見つかった沿岸部の水軒堤防石垣のことなど、最近新たに分かった考古学的な知見もきちんとフォローされており、常に新知識を求めた三尾さんの姿勢が伝わってくる。ご冥福を祈る。
 
*1 市史編纂だよりに掲載されたのは110話だったが、三尾さんが大半の83話を執筆した。その83話に17話を三尾さんが書き足して、最初の「百話」が刊行された。発行者は「和歌山市長・宇治田省三」となっているが、著者は三尾さん一人である。
*2 増補改訂版は表紙にも「増補改訂 城下町和歌山百話 三尾功」とあり、完全に三尾さんの著書という体裁になって、今回と同じ宇治書店から発売されている。


(右から)1985年刊行の「城下町和歌山百話」、増補改訂「城下町和歌山百話」、いちばん左が三尾功さんの遺著となった「城下町和歌山夜ばなし」


<back>

 HOME / ごあいさつ / 自分史(1946〜2002) / 父との別れ / 憂楽帳 / 惰学記 / 父の思い出 / 後援会 / 大きなうた / 余談独談 / 志談 市談 私談

 大橋建一へのご意見等は、こちらから。  E-Mail : info@ken-ohashi.jp url