明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
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市民が主役



余談独談




和歌山市歌

 「信濃の国は十州に 境連ぬる国にして〜」と始まる長野県歌「信濃の国」は、テレビの「秘密のケンミンshow」でも、長野県民なら誰でも歌えるということで取り上げられたが、それ程ではないにせよ、「ほのぼのとかおる浜木綿〜」で始まる和歌山県民歌*1(西川好次郎作詞、山田耕筰作曲)は、県関係の様々な式典などでは必ず歌われたり演奏されたりするので、県民のかなりの人が口ずさむことができる程には知られているようだ。
 県民歌は戦後間もない1948年、篤志家が資金を提供し、「後世に残るもの何か考えてほしい」と依頼した*2ことをきっかけに、作詞部門の選者を新宮出身の佐藤春夫が担当、佐藤とコンビでしばしば作曲していた山田耕筰が作曲部門の選者となって公募された。旧美山村出身の西川好次郎の詞が選ばれたが、作曲は受賞作がなく、山田自身が作曲した。
 これに比べ、和歌山市市歌の知名度が低いのは残念な話である。市歌は佐藤春夫自ら「これ南海の鎮(しず)めぞと 南龍公が志 潜(ひそ)めし城は旧(ふ)りにしを 城下の意気ぞ 新たなる 星移り 物変わるとも 常(とこ)若の市(まち) 和歌山市」という詞を書き*3、県民歌と同じく山田耕筰が作曲したもので、歌詞はやや古めかしいが荘厳な名曲だと思う。
 その市歌は実は戦後生まれの4代目で、戦前に和歌山市歌は3回も作られている。前回の余談独談に登場した三尾功さんの遺稿「城下町和歌山夜ばなし」によると、初代の市歌は1922(大正11)年に「市民の愛市精神を一層濃厚ならしめ、自治振興に策するため」として歌詞を公募したところ、125点の応募があり、時の知事や当時朝日新聞記者だった杉村楚人冠(和歌山市の偉人先人として顕彰されている)らが審査し、西和佐村の岩橋喜宮一が1等入選し、賞金100円*4を獲得した。歌詞は1番が「葵の城の曙 紀伊の川原の夕月 清き眺めに抱かれ 若き我市は賑わう」、2番が「甍の波は漲り 煙の雲は群がり 海路陸路の幸添い 若き我市は栄えん」というものだったが、メロディーは不明である。
 2代目は1935(昭和10)年に再び公募されたが、入選作がなく*5、歌人・土岐善麿作詞、東京音楽学校教授・下総皖一作曲で発表された*5。そのわずか5年後、「紀元2600年記念に三たび市歌の公募が行われ、1等500円という高額賞金*6につられてか、920点の応募があった。審査の結果、有田郡広村の広小学校教諭・田辺善一の作品*7が1等に入選した。
 正直な話、私も市長になるまで市歌を知らなかった。市関係の行事で何度か歌ってやっと覚えたが、1955(昭和30)年の市制66周年の時に、「今の時代にふさわしい市歌を」と、作成されたこと知るまでは戦前の作品だと思い込んでいた。この格調高い市歌をもっと市民に知ってもらうため、昨年から市のホームページに楽譜と歌詞を掲載し、パソコンで曲が聴けるようにしたが、今後は、これまで以上に市の行事で市歌を歌うよう心掛けたい。
 
和歌山市歌
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*1 1番の歌詞は「ほのぼのとかおる浜木綿 陽に映ゆる緑の起伏 和歌山は常春の国 人の和と文化を添えて いや更に伸びよ栄えよ ふるさとはつねに微笑む」
*2 和歌山県ホームページ「和歌山県民歌の誕生」から引用した。
*3 2番の歌詞は「見よ紀の川の川口に 民衆起ちて封建の 夢吹き払い新時代(あらたよ)の 都市に産業興りたり」となって「星移り」からは1番の繰り返しである。問題は3番の歌い出し「豈(あに)煤煙を誇らんや」で、昭和30年代初頭、住友金属和歌山製鉄所から大量の煤煙が市内に飛散していたことを反語的表現で批判しているのだが、歌っていて違和感があり、最近はほとんど歌われない。後に続く「風光ゆかしこの辺り 鶴(たず)鳴き渡る和歌の浦 高野の山も近くして(以下『星移り』の繰り返し)」という和歌山市の景色を賛美する部分も歌われなくなったのは残念である。
*4 今の金に換算すると53,000円くらいか。
*5 1番は「高い誉はお城の天守 緑老松葵の栄え 海は眼の前希望に満ちて 流れ紀の川昼夜をおかぬ 繁栄 繁栄 吾等の和歌山」、2番は「見よや交通四方に延びて 進む産業 煙もなびく 神武東征畏し昔 今は南海平野の都(以下繰り返し)」、3番略。
*6 ただし賞金は国債または貯蓄債券で渡すことになっており、戦時下の様相を示している。
*7 1番は「虎伏の城の気高さ 仰ぎつつ 競う雄心輝かし 歴史を受けて産業の 伸びに伸び行く和歌山市」、2番は「日前の神の御前に もろともに 誓う真心奉公の 血潮に燃えて協同の 力みなぎる和歌山市」、3番略。歌詞も戦時下らしい。




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