私はミステリー好きで、気に入ったシリーズものは文庫本を片っ端から買って読んでしまう。一気読みして、筋をすぐ忘れてしまうので、新しく買った本を途中まで読んで、やっと「前にも読んだことがある」と気づくことも多い。もっとも、これは多くの中高年が経験しているらしく、何人もから「実は私も」という告白を聞いた。東野圭吾、宮部みゆき、栗本薫、内田康夫、高村薫、海堂尊、綾辻行人、東川篤哉*1などその時々の話題作を手当たり次第に読んだ感もあるが、森博嗣、田中芳樹、松岡圭祐、鯨統一郎、さらには二階堂黎人、深谷忠記、吉村達也、北村薫、古くは山村美紗らのシリーズものも好みだった。 |
何を隠そう、実は「美女探偵」が登場する作品が大好きなのである。二階堂蘭子ものは美形の少女探偵と、残忍極まりない殺人事件のミスマッチが売りで、殺人鬼ラビリンスとの対決である「悪魔のラビリンス」「魔術王事件」「双面獣事件」「覇王の死」でも、独仏国境近くの古城で起きる惨劇を描いた世界最長の推理小説「人狼城の恐怖」でも、死屍累々、一体何人が殺されたか分からない。大勢が死んでから二階堂蘭子が登場して謎を解くわけで、ミステリーの名探偵の常とはいえ、もっと早く乗り出してほしいと思いながら読む。 |
森博嗣作品は、元愛知県警本部長の令嬢で、両親を飛行機事故で亡くしたN大の学生・西之園萌絵が助教授*2・犀川創平とコンビで活躍するS&Mシリーズなど*3ほとんど読んだし、最近は松岡圭祐の万能鑑定士Q=凜田莉子や特等添乗員α=浅倉絢奈のシリーズ*4とか、高飛車な美人歴史学者・早乙女静香らが活躍する鯨統一郎の歴史推理ものも次々読んでいる。伝奇アクションの田中芳樹は創竜伝が有名だが、警視庁刑事部参事官・ドラよけお涼*5こと薬師寺涼子警視のシリーズがバカげていて好きだ。北村薫の覆面作家シリーズは3冊しかないが、大富豪のおしとやかな娘で新進作家の新妻千秋が、屋敷を出るとがらりと人が変わって名探偵ぶりを発揮する話である*6。深谷忠記の壮&美緒シリーズはアリバイ崩しがメーンで、出版社の編集部員・笹谷美緒が恋人で大学講師の数学者・黒江壮とコンビで事件解決にあたる。30作以上あるが、ここ数年新作が出ていないのは寂しい。 |
山村美紗の作品の多くは女性が探偵役*7で、中でも名探偵キャサリンは米国副大統領の娘キャサリン・ターナー*8が京都で起きる殺人事件を解決するものでおなじみ狩矢警部も登場する。キャサリンを社長令嬢でカメラマンの日本人・希麻倫子に置き換えて、かたせ梨乃主演でテレビシリーズになった。吉村達也の烏丸ひろみシリーズは、彼女が警視庁捜査一課の女性刑事という設定で始まったコミカルな刑事ものだったが、次第に心理サスペンス化した。ひろみは襲われて一時記憶を失い刑事を辞めるが、その後も事件と遭遇する。山村美紗も吉村達也も故人になってしまった*9ので、もう続編が読めないのが残念だ。 |
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