楽天の田中将大投手(24)が開幕21連勝、昨季から通算25連勝という大記録を達成した。田中投手は8月9日にKスタ宮城での対ソフトバンク戦に先発、7回無失点で今季開幕から無敗の16連勝を達成、この時点で1981年の間柴茂有(日本ハム)、2005年の斉藤和巳*1(ソフトバンク)の持つ開幕15連勝の記録を破った。さらに、16日の対西武戦で17勝目を挙げ、昨シーズン後半からの連勝記録を21に伸ばし、1951〜52年の松田清(巨人)、57年の稲尾和久*2(西鉄)の20連勝を超えた。そして9月6日、101年ぶりに世界記録*3を破る開幕20連勝に到達、13日の対オリックス戦は完投で通算25連勝、開幕21連勝となり、大リーグのカール・ハッベル(ジャイアンツ)が1936〜37年に記録した24連勝の世界記録を更新、同一シーズン20連勝の稲尾のプロ野球記録も超えたのである。 |
実は稲尾は20連勝したシーズンに計35勝(6敗)している。連勝のスタートは後半戦に入った7月18日で、76日目の10月1日に20連勝を達成した。この76日間の登板試合数は32、先発が14試合12勝、救援が19試合*4で8勝となっており、投球回数は182回1/3、中2日で先発したのが4回、その2日の間に救援で登板したのが2回、計3試合あった。田中の場合はすべて先発で、4月2日に今季初登板初勝利を挙げ、158日目となる9月6日の23試合目で20連勝となった。この間の投球回数は181回で稲尾とほぼ同じだ。 |
つまり稲尾が76日で作った記録を田中は158日かけて作ったことになる。どちらの記録が凄いかの判断は難しい。わずか76日で20勝する稲尾の“鉄腕”にも恐れ入るが、シーズンを通して先発を続け、勝ち続ける方がさらに難しいようにも思える。どんな選手でも調子の波があり、シーズンを通して好調を保つためには大変な努力が必要で、健康管理を一手に引き受ける年上妻・里田まい*5の「内助の功」にも頭が下がる。現に、戦後プロ野球でシーズン10勝以上を挙げて無敗だった投手は81年の間柴(15勝)1人だけで、1敗も、ともに16勝の05年の斉藤と07年の成瀬(ロッテ)の2人しかいない。田中が、「不世出の大投手」「神様、仏さま、稲尾様」と言われた稲尾と肩を並べたのは間違いない。 |
さて、田中将大といえば、ハンカチ王子と言われた同期の斎藤佑樹(日本ハム)の名が浮かぶ。甲子園で田中と投げ合い、早実に優勝をもたらした後、プロの誘いを蹴って早大に進学、六大学野球のヒーローとなったが、プロ入り後の2年余は、12年のシーズン初めだけ活躍したが、あとはパッとせず、今季は肩を痛めて二軍暮らしである。マスコミにもてはやされ、「自分は何か持っている」などと慢心しているうちに田中に圧倒的な差をつけられてしまった。ゴルフの世界で、松山英樹にあっという間に追い越された石川遼も同じだが、世の中チヤホヤされて舞い上がってしまうほど怖いことはない。あれほどマスコミをにぎわした斎藤だが、どんな思いで田中の快挙を見ているのかさえ今は報道されない。 |
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田中将大投手の大記録について書きたくて、先週に引き続き惰学記の予定を余談独談に変更した。3回続けて余談独談となったので、次週以後惰学記が続く。お許しいただきたい。 |
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