明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
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市民が主役



余談独談




和食

 今月初め、アゼルバイジャンで開かれていたユネスコ(国連教育科学文化機関)の政府間委員会で「和食(日本人の伝統的な食文化)」の無形文化遺産登録*1が正式に決まった。国際的には暗い話や不安な事件ばかりが多かったので、久々の明るい話題は喜ばしい。
 新聞報道などによると、ユネスコの「食の無形文化遺産」への登録は過去に「フランスの美食術」「地中海料理」「トルコのケシケキ*2の伝統」「メキシコの伝統料理」の4件しかなく、和食は世界3大料理*3の一つとされる中華料理に先んじて登録されたことになる。
 2011年に京料理の関係者が和食の登録を働きかけるよう京都府に要望したのがきっかけで、文化庁や農林水産省が動き出し、@新鮮な食材とその持ち味を生かした調理法A栄養バランスに優れた健康的な食習慣B自然の美しさや季節の移ろいを表現する盛り付けや器の工夫C正月料理など伝統の年中行事との密接な関わり――の4点を推薦理由に挙げ、自然尊重という日本人の精神を体現した社会的慣習としてアピール、今回の登録に至った。
 しかし、文化遺産登録申請のきっかけは、皮肉なことに日本人の食習慣の洋風化、つまり「和食離れ」に対する危機感であった。ご存知のように1960年代の高度成長期以後、日本人の朝食スタイルがご飯中心の和式から、「トースト、コーヒー」中心の洋式に徐々に変化し、昼は学校ではパン給食、家庭ではファストフードや、パスタを含む麺類などに変わっていった。その結果、国民1日1人当たりのコメ消費量は、ピーク時の1963年度には118.3kgだったのが、2012年度には56.3kgと半分以下にまで落ち込んでしまっている。
 京料理の関係者は、和食のヘルシーさが各国で評価され広まっているのに、国内では和食離れが止まらない“ドーナツ化”状況に歯止めをかけなければという思いから無形文化遺産登録に取り組み、「世界が和食を高く評価している」ことを訴えたかったのである。
 なぜ、こんなに和食離れが進んだのか。今から68年前の敗戦直後、日本人、とくに都会の人間は飢えていた。戦勝国の米国からパンや缶詰、マカロニや粉乳が大量に日本国民への援助物資として送り届けられた。小学校の給食はパンに脱脂粉乳とおかず1品。同時に、「コメばかり食べていると脚気になる。パンの方が栄養に良い」というキャンペーンが張られ、給食によって子どもたちは、まず和食離れを体験した。その子どもたちが高度成長期に親となって、「子どもの栄養を考えて」洋風メニュー中心の食事を推進、巷には米国式のファミレスが林立して、「好きなものはハンバーグ、カレー*4、焼き肉」という肥満児が続出、今はその子たちが親世代になり、食べ物の味も分からぬファストフード頼りの和食嫌い家族が増えたのだと思う。「親切な米国人」による日本人の食習慣改変作戦*4に「正直な日本人」はすっかり乗せられたのではないだろうか。和食再発見の時は「今でしょ」
 
*1 日本の無形文化遺産は能楽、人形浄瑠璃、歌舞伎、雅楽、小千谷縮・越後上布、京都祇園祭の山鉾行事、アイヌ古式舞踊、結城紬、那智の田楽などに続き22件目である。
*2 トルコのケシケキは麦粥のジャンルに入るトルコ人やアルメニア人の伝統食。「トルコ料理の世界へトリップ」というHPによると、挽き割り小麦と牛や羊の肉を大ナベで一緒に煮込み、骨を取り出した後、大勢でじっくり一晩かけて火を通しながら練り、小麦と肉の繊維質が絡み合って肉のうまみが全体に広がるようになったら、バターに赤唐辛子またはトマトペーストを混ぜた香味油をかけて食べる。
*3 一般的に世界3大料理と言えば、フランス料理、中華料理、そして意外にもトルコ料理を言う。
*4 カレーはカレーライスとしてコメを食べる料理で、インド料理を日本風にアレンジした、日本人の伝統的嗜好とファストフード的な食べやすさをミックスした料理と言える。しかし、カロリーが高く、チキンライスやオムライスなど戦前から「洋食」として好まれたものの系列と考えるべきで、いわゆる和食とは異なるジャンルのものだ。カレー好きが和食好きに結びつくとは考えにくい。
*4 作戦の狙いはもちろん、小麦など米国産の農産物をはじめとする食糧を日本人に大量に買わせ、米国産品なしでは日本人の食生活が成り立たなくなるようにすることである。もちろん、米国人の多くは純粋に「自分たちの食べているものが世界一栄養のバランスが良い、おいしいものだ」と思いこんでいる人たちだから、パン食や高カロリーでたんぱく質中心の食品を売り込んだのはアメリカ式善意だったと思うが、結果的に日本人の体力低下を招き、対米依存を強めることになったのは間違いない。そして米国人の方は、高カロリーの自国伝統料理による肥満などの生活習慣病の危険にようやく気付き、栄養バランスに富んだ健康食志向が強まって、自分たちが日本人に「食べない方がいいよ」とかつて指導した和食のような料理にシフトしているのではないだろうか。


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