明日  I will support Ohashi For tomorrow. 大橋健一
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市民が主役



余談独談




敬礼

 「敬礼!」という言葉を聞いて、どんな仕草を思い浮かべるだろうか? 自衛官、警察官、消防官など制服制帽の人間が、「気をつけ」の姿勢で、右手を挙げて、ひじを曲げ、指先をこめかみの辺りに付けて示すあいさつの形を敬礼と言うのだと思っている人が多いのではないだろうか。制服制帽同士のあいさつなら、敬礼はこの動作で確かに間違っていないが、厳密に言うと、この動作は敬礼の一つのパターンである「挙手注目礼」であって、敬礼といえば挙手注目礼というわけではない。広辞苑や日本語大辞典によると、敬礼とは「敬意を表して礼をすること。また、その礼」とある。つまり、敬礼は敬意を表す所作一般のこと*1で、「挙手注目礼」は当然含まれるが、学校などでの「起立、礼」の「おじぎ」、国旗への「脱帽、気をつけの姿勢」、神社・仏閣でのお参りの動作などすべてが含まれる。
 ではなぜ、敬礼すなわち挙手注目礼と思われるようになったのか。多分、「敬礼」という号令がかかるのは、制服制帽の部隊が行列行進する場合がほとんどで、号礼と共に部隊全員が「挙手注目礼」をするので、現場あるいはテレビで行列行進を見た人の多くが、「挙手注目礼」を「敬礼」と思い込んでしまったためだろう。しかし、よく見ると消防出初式などでも、制服制帽でない背広姿や半被を着た来賓は、あいさつの際に「○○会長に対し、かしら中!」と号令がかかって挙手注目礼する部隊に、お辞儀の形で礼を返している。
 ところが、テレビの刑事ものや「空飛ぶ広報室」など自衛隊ものを見ていると、制服制帽姿でない一般人や私服刑事らがやたらと「挙手注目礼」をするので、とても気になる。自衛隊や警察では礼式が細かく定められており、着帽時と脱帽時で異なる。ポイントは、着帽時は挙手注目礼が基本だが、脱帽時はお辞儀*2で、挙手の礼はしないことだ。
 警察礼式には、「室内の敬礼は通常脱帽している室内で行い、室外であっても着帽していない私服勤務員などは室内の敬礼を行う」とあり、重ねて「挙手注目の敬礼は制帽やヘルメットを着帽している場合に行い、無帽の場合は行わない」と注意を促している。ウィキペディアも「テレビの刑事ドラマなどで、しばしば刑事が私服無帽ながら挙手注目礼を行うが、日本の警察礼式においては明らかに誤り」としている*3。私が最近愛読中の松岡圭祐の小説・千里眼シリーズの9巻「トランス・オブ・ウォー」には、脱帽時に挙手の敬礼をしかけた女性自衛官に、上官が「いま敬礼を返す時、手を挙げかけたな」「挙手の敬礼は着帽時に限ると防衛大で習わなかったか」と叱責し、テスト失格を言い渡す場面*4がある。
 元々、挙手注目礼は、脱ぐことのできない制帽をかぶっていてお辞儀できない場合の「代用」に手を挙げ、頭の横につけるものだから、無帽の人はお辞儀をするのが当然なのである。テレビ番組が世の中に間違った礼儀作法を撒き散らしているのは全く困ったものだ。
 
*1 「最敬礼」も敬礼の丁寧なものという意味だから、45度以上の深いお辞儀をすることで、決して「挙手注目礼」を長くやることでも、挙手注目礼をしながらお辞儀することでもない。
*2 お辞儀については、皇族や国旗に対しては45度、一般のお時儀は10度と、礼をする対象によって角度に関する規定もある。
*3 ウィキペディアではまた、挙手注目礼について、「日本では明治時代初め、大日本帝国海軍を創設する際に導入された。脱帽時には挙手の敬礼をしてはならず、会釈、お辞儀のような敬礼をする」と記されている。ただし日本以外の軍隊などでは脱帽時も挙手注目礼を行うところもある。
*4 元航空自衛官で臨床心理士になった岬美由紀を主人公にした「千里眼シリーズ」(角川文庫版)の「トランス・オブ・ウォー」上巻166ページ。航空自衛隊の救難ヘリ・パイロットの欠員を埋める候補者の選抜テストの情景のひとコマとして描かれている。


1月12日朝、和歌山市消防出初式で、参加部隊に「挙手注目礼」で応える
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