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日本沈没

 小松左京のSF大作「日本沈没」は32年前の1973年3月に光文社から出版され、あっという間にベストセラーになった。私の手元に7月15日発行のカッパノベルス版上下があるが、初版から4カ月経ってないのに、上巻の奥付には何と「145版」、下巻の方は「122版」となっている。爆発的な売れ行きで最終的に400万部を超え、特撮の東宝が直ちに映画化、翌年秋にはTBS系列で26回シリーズのテレビドラマも制作された。
 ストーリーは、鳥島に近い島が突然海没し、連鎖的に日本中で天変地異が相次ぐことから始まる。潜水艇による日本海溝調査で異様な海底乱泥流を目撃した学者が日本列島沈没の前兆かと直感する。京都で死者4200人の大地震が発生、政府は「沈没対策」の「D計画」=国民総脱出計画に乗り出すが、各地で火山噴火が相次ぎ、M8.5の東京大震災が発生、首都圏で250万人が犠牲になる。ついに政府は1年以内に日本列島は沈む可能性が高いことを世界に発表、1億国民の受け入れを要請した。「D計画」に基づく根回しの成果もあって、計3000万人程度の受け入れを各国は表明したが、そのさなか富士山が大爆発し、糸魚川−静岡構造線沿いの山が次々噴火して日本中がパニックとなる。近隣のアジア太平洋諸国や当時のソ連は、日本への根強い不信感があり、受け入れに消極的で、避難する日本人の側もオーストラリア、欧州、北米希望が圧倒的に多く、東南アジアや中国、ソ連には行きたがらない。その間に関西を大地震と津波が襲い、中央構造線以南がちぎれ、西日本は水没。国際的な支援により何とか計6500万人を脱出させた段階で列島は最後の時を迎える。さて、祖国を失い、海外にバラバラに移住した日本民族の運命やいかに――というところで小説は「第1部完」となり、第2部はいまだ刊行されていない。
 ちなみに、東海地震の可能性が学者から発表され、国などが対策に乗り出したのは、この本が出てから3年後の1976年であり、阪神・淡路大震災はその19年後、東南海・南海地震の懸念が語られ始めたのはさらに数年後である。「日本沈没」は、まだ地震のメカニズムが十分解明されていない時代に、最新の理論を駆使して大地震や津波、火山噴火などの天変地異到来を「予言」したもので、小松左京の鋭い先見性に改めて感心させられる。
 文庫本の前書きなどによると、大地震のため高速道路が破壊される場面を書いたところ、専門家が「そんなことが起こるはずがない。いたずらに人身を乱すべきではない」と苦言を呈してきたそうだが、その通りのことが阪神・淡路大震災では起きたのである。
 作者が書きたかったことの一つは、「国家危急存亡の時」に際して、果たして国際社会が日本を助けることに一丸となってくれるのか、そのような時に備えた日本外交が展開されているのか――という問いだったように思える。今なお中国や韓国、ソ連崩壊後のロシアなどとの摩擦が大きく、国連の常任理事国入りにも肝心の近隣諸国の賛同が得られない状況を見る時、作者の警鐘は32年後の今も有効で、光明は見えていないように思える。

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