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■第1集  ■第2集  ■第3集



■第3集

ツァラトゥストラは

 ダービーまであと3日。初めてテレビ観戦した28年前のダービーの思い出話から。泥んこ馬場で、人気のタカツバキがスタート直後落馬。今も現役の大崎昭一騎手の伏兵ダイシンボルガードが直線で抜け出し優勝した。担当厩務員が我を忘れて馬場に走り出したエピソードを残している。
 ダイシンボルガードの父はイーグルで、もちろん鷲のことだが、当時の種牡馬はヒンドスタン、インターメゾ、ダイハード、ザラズーストラなど印象的な名前が多かった。ヒンドスタンはパキスタン、アフガニスタンなどと同類で「インド=ヒンズーの国」。何かのブランド名にもあるインターメゾは「間奏曲」、ブルース・ウィリスの映画と同じダイハードは「頑張り屋」の意味だ。ではザラズーストラは?
 話が急に飛ぶが、ヒントはニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」。映画「2001年宇宙の旅」で流れるR・シュトラウスの曲の名でもある。実はザラズーストラとツァラトゥストラは同一人物のギリシャ語読みとラテン語読みで、約2500年前ペルシャで始まった善悪2神の宗教の開祖の名前だ。歴史の教科書には、英語読みで「ゾロアスター」と出てくる。
 名前の読み方。「ギヨエテとは俺のことかとゲーテ言い」という古い川柳を連想してしまう。

 

どんなときも。

 フジテレビ系のドラマ「いいひと。」が好調らしい。他人が幸せであることが自分にとっても幸せだと信じて疑わず、損を承知で困っている人に手を差し伸べてしまう主人公と、演じるSMAPの草g剛君のイメージがマッチしたせいだと思うが、それはさておき、気になるのは題名の末尾の「。」。
 普通、テレビ番組名や曲名には「。」はつかない。「いいひと。」の場合は原作の漫画の題名に「。」があり、ドラマもそのまま使ったわけだ。原作のビッグコミックスピリッツ編集部(小学館)に聞くと「本当はだれもが、主人公のような
『いいひと』の心を持っているんだという思いを『。』に込めた」という難しい説明だった。
 実は新聞の見出しも、普通は「。」を使わない。見出しは文章ではなく、記事のポイントを示す語句を抽出するものなので「、」は使っても「。」は不要という考えからだ。だから「いいひと。」や、数年前のヒット曲「どんなときも。」のようなマル付きの題名を見出しにする時は違和感がある。
 最近、「いいひと。」の影響か、新聞の普通の見出しにも「。」をつけたがる記者が出てきた。注意しても、よく分からない説明をして変えないので「まるで話にならない」。
 「。」に意味があるなんて、だれが決めたんだろう。

 

お座敷小唄

 若者言葉に「なにげに」というのがある。「きのう、なにげに原宿のブティックに入ったらさあ」というように「なにげなく」の意味で使われ始め、「さりげなく」とか「実は」「わりあい」の意味にもなる。金曜夕刊「学生パオパオランド」にも「なにげの主張」という欄があるが、調べた範囲では、普通の辞書で「なにげに」があるのは岩波国語辞典(第5版)だけだった。
 「なにげない」の「ない」は当然にも否定の意味。その「ない」がないのに、実は同じことを意味している。「だから若者の使う言葉は日本語を乱す元凶だ」と怒るのはちょっと待ってほしい。似た例は昔からあるからだ。例えば「極まりない」と「極まる」、「とんでもない」と「とんだ」、「せわしない」と「せわしい」。いずれもほぼ同じ意味で、「ない」は否定ではなく、状態を強調している。
 33年前のヒット曲「お座敷小唄」の一節「雪に変わりはないじゃなし」は「あるじゃなし」の歌詞の都合による言い換えだし、「食べず嫌い」という言葉につられて「負けず嫌い」という誤用が定着した例もある。だから「とんでもない」や「極まりない」の連想で、「なにげなく」が「なにげに」になっても不思議ではないのではないか・・・・。ウーム、ないが重なって訳が分からなくなってきた。

 

煙草のけむり

 新聞記者というと、ドラマなどの影響もあって、始終煙草をプカプカというイメージを描く人が多いようだ。確かに数年前まではその通りだった。
 もちろん今ではチェーンスモーカーは多いが、記者と喫煙が切っても切れないものだった時代は終わったようで、私たちの職場では、1年以上前から分煙が実施されている。喫煙場所は灰皿のある所だけになり、仕事の席では吸ってはいけないルールである。
 私の職場は、取材部門から出てきた原稿を何段のどんな見出しで載せるかを決め、1ページの紙面に仕上げるのが仕事で、勤務中はほとんど机に座っている。だから、以前は分煙など実現不可能と思われていたが、職場に女性記者が急激に増え、最近では2ケタの大勢力になった結果、「周りで始終吸われ、煙害がひどい。髪も服も臭くなって困る」という声が高まり、不可能を可能にしてしまった。煙を嫌う電子機器の多い職場はもっと徹底していて、室内は完全禁煙になっている。
 13年前に禁煙し、今は嫌煙派の私は分煙大歓迎だが、女性パワーとコンピュータの挟み撃ちに合っている愛煙家にとっては住みにくい時代だろう。
 それにしても、昔は女性記者にも吸う人が多かったのに最近はあまり見ない。昔の高校生みたいに隠れて吸っているのかしら。

 

笑って許して

 新聞の見出しは、記事のポイントを短い言葉で表現せねばならないので、つい無理な省略をしてしまう。よく指摘されるのが「乱用にクギ」「食糧費返却しエリ」「甲子園の熱戦火ぶた」といった表現。それぞれ「刺す」「正す」「切る」を省略しているが、「糠にクギ」という成句があるクギ以外は読者にまねをされては困る使い方だ。
 最近、著名人の葬儀の記事で見たのは「献花でめい福」。「を祈る」の省略と分かるが、やはり変である。
 受け身の言葉を略するのも問題が多い。「坊や誘拐、無事」「乗っ取り機、海に墜落」は、「坊やが誘拐されたが無事救出された」「乗っ取られた飛行機が海に墜落した」のつもりなのだが、理解してもらえるだろうか。
 「逮捕者に日本人も」と「逮捕者に賞金」は、前者が逮捕された者、後者は逮捕した者を意味している。した方もされた方も同じ言葉で済ます例は他にも多いが、考えてみると妙な話だ。
 ワープロで「見出し」と打つと「乱し」となるのは日本語を乱す新聞編集者への皮肉かと思ったりする。
 というわけで、私の憂楽張はこれが最終回。
実は13回分すべて見出しは歌や楽曲の曲名を拝借した。かなり苦しいこじつけもあって日本語を乱したかもしれないが、どうか「笑って許して」いただきたい

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